歌めぐり旅(1)ウィーン河畔

 初渡欧は1971.7.27~8.17の3週間、フランスなど12カ国をまわるツアーでした。主目的がシャンソンのゆかり探訪なのでパリに1週間ひとりで過ごし、イギリスなど5カ国はパスしました。この旅でもうひとつの生きがいとなる出あいがあります。1971.8.8、ウィーン河畔[アン・デア・ウィーン]劇場1194席でのオペレッタです。ここは『魔笛』の台本作者でパパゲーノ役エマヌエル・シカネーダーが1801設立し、『フィデリオ』1805、『こうもり』1874などを初演した由緒ある劇場。観たのは1967~83夏にロングランしていたフランツ・レハール作曲『メリー・ウィドウ』です。シーズンオフのフォルクスオパーから、多くの歌手が客演されていたという。私的録音あり。

 『メリー・ウィドウ』の初演は1905.12.30ウィーン河畔劇場、指揮は予告では作曲者ですが、彼の若い友人で首席指揮者のロベルト・シュトルツ。わたしは66年後その劇場で、指揮:ルドルフ・ビーブル、ダニロ&ハンナ:ハラルド・セラフィン&ミルヤーナ・イーロッシュで観ました。主役コンビはながく語り草になるほどの人気だったという。ビーブルは1973年からフォルクスオパーの専属になります。帰国早々72年には2.27、3.5二期会、立川清登(澄人)&伊藤京子で鑑賞しました。オペラ愛好会会員20数年間で全演目を観たなかに、オペレッタは島田77,84・佐藤84,88・鮫島89・秋山91・澤畑2010歴代ハンナたちの『メリー・ウィドウ』、ほかに『こうもり』『ジプシー男爵』『天国と地獄』など数演目・数回あり、いまも『チャルダーシュの女王』2014など。

 オペレッタ公演の現状は『こうもり』『メリー・ウィドウ』など、ウィーンものがほとんどです。オペレッタの発祥はパリ、始祖オッフェンバックがヨハン・シュトラウスⅡにオペレッタを書くようすすめた逸話あり。それを豊かにみのらせ、いまオペレッタの本場はウィーン・フォルクスオパー1586席1906です。河畔劇場ではその後も一度、そして『メリー・ウィドウ』『パリの生活』『ジプシー男爵』など何度か楽しんだフォルクスオパーが1979年にMr.オペレッタ、ペーター・ミニッヒたちが初来日し、いまに続いております。『メリー・ウィドウ』『こうもり』だけでなくほかのシュトラウスⅡ作品もカールマンまで演目に加わり、ファンが熱狂し激増してブームに沸いたのでした。近年の来日でみたのは、2012年『メリー・ウィドウ』5.26と『こうもり』G5.11です。

 日本オペレッタ協会(オペレッタ友の会1977の後身)は1981年に創立(91財団)。86.1.25西麻布にテラサキ・ホールがオープン(-2008)。わたしは神楽坂、新大久保、西麻布、日暮里、新宿など、さらに王子の大・中ホールで多数のオペレッタを何度もなんども堪能しました。1998と2002年には、レハールの出身国ハンガリーで『微笑みの国』を公演しており、天覧公演2002もありました。2013年までに本邦初演が22演目、35作品を創造されたそうです。14年NPOで再出発。

30数年間で鑑賞した協会公演を略称で並べると、ウィーン、ルクセンブルク、マリツァ、微笑み、白馬亭、二人の心、春パレ、小鳥、巴里生活、メリー、三人姉妹、こうもり、月光、ブン大将、チャルダ、ヴェニスなどそれぞれの複数回ですが、いつも期待に胸ふくらませて出かけ満足して帰りました。なかでもウィーンで半世紀もまえに一目ぼれした花やもめ『メリー・ウィドウ』を、わたしには仲人ともいうべき、世界オペレッタ界の巨匠ルドルフ・ビーブル指揮で本拠と来日十数回、うち協会で2回(2000、05)も鑑賞できた喜びは大きい。協会では佐々木&田代でした。

 『メリー・ウィドウ』「原語Die Lustige Witwe」の日本初演は1908(明治41)年イギリスのバンドマン喜歌劇団(本拠カルカッタ)による公演(神戸体育館)です。17年まで何度か国内で続演し、東京公演は1911有楽座、1917帝劇『花やもめ』。邦人による訳詞上演は1930(昭和5)年に「メリー・ウィドウ」「陽気な寡婦」の演奏会形式でした。欧米主要国の初演は1906ベルリン[原・独語Die Lustige Witwe]、1907ロンドン・ニューヨーク[英訳The Merry Widow]。1909パリ[仏訳La Veuve Joyeuse]は『ベル・エポック』も残すところ5年おおいに沸きました。世界的なヒットゆえに英語タイトル「メリー・ウィドウ」が流布したようですが、日本ではイギリスの喜歌劇団による初演・続演と発音・表記・語感がやさしいので「メリー・ウィドウ」が愛着・定着したのではないでしょうか。名訳「花やもめ」が忘れられそうなのも、惜しいとは思いませんか。(2016.5.18) 後藤光夫©

アン・デア・ウィーン[ウィーン河畔]劇場
アン・デア・ウィーン[ウィーン河畔]劇場
チケットDie lustige Witwe 1971.8.8 午後8時
チケットDie lustige Witwe 1971.8.8 午後8時
フランツ・レハール(市立公園)
フランツ・レハール(市立公園)
ロベルト・シュトルツ(市立公園)
ロベルト・シュトルツ(市立公園)
イーロッシュ&セラフィン
イーロッシュ&セラフィン
ペーター・ミニッヒ
ペーター・ミニッヒ
ウィーン・フォルクスオパー
ウィーン・フォルクスオパー